評価:★★☆☆☆
この本を読むまで、カプセル型の日本オリジナル宇宙船の話があるとは全く知らなかった。NASDAの先端ミッション研究センターの野田氏が提唱した有人飛行構想と書かれているが、果たしてこれがNASDA公式のものなのか、それとも個人的な研究会のものだったのかは結局分からなかった。あくまで参考程度に読んでみた。
著者の松浦氏は科学ジャーナリストで学者ではない。なので以前読んだH2A何故落ちるのか本では出展が気になってしょうがない箇所が多数あったので、ぜひ学術書も書いて頂きたいものである。
ともかく、口絵にあるなんだか攻殻機動隊2のようなCGは初めて見るものが多く、SF感がかなりある。潰れたアポロのような「ふじ」のCGは結構見応えがあり、このようなCGが多いと想像もしやすく、理解の助けにもなるだろう。
簡単に感想を述べると以下の通りである。
・単なる「ふじ」の紹介ではなく、有人飛行のなんたるや、を数式なども交え詳しく紹介しているのでなかなか勉強になる。入門書としてはスッキリとしてて良い。
・しかし、相対的に「ふじ」の利点を強調しよとするあまり、スペースシャトルなどの再利用型宇宙船へのネガキャンが無駄に目立つ。
・だからこそ、アメリカが無理なら「ふじ」なぞ到底実現不可能だろう、という感想を抱かざるを得なかった。
・日本人の宇宙書物で恒例の「〜であろう」という超希望的観測に基づく記述が多く、さっきまで散々海外の計画disっといてそれは無いだろ、と突っ込まざるを得ない。要は前半の批判で墓穴掘ってる。
とまあそんな感じの内容でした。「ふじ」ってこんなにすげえんだぜ!というよりもスペースシャトルとかをこき下ろすのが中心なネガティブ感マシマシな内容でした。
1章
1頁から15頁まで、「ふじ」の概要について述べられている。しかし、図を多用しているため実質8頁くらいだろうか。さらに半分程度を「ふじ」の観光用途について力説しているもで、技術的な話はそれほどでもない。また開発コストや企業との連携については全く記載がなく、本当に概要といった感じ。そもそもなんで「ふじ」なのかの説明もほとんど無かった気がする(富士山ぽくは無いと思う)もっと詳しく「ふじ」について知りたかった。
2章
スプートニクからアポロまでの有人飛行の歴史について解説。こっちは結構面白いので、宇宙開発史にもっとフォーカスした著作の方が向いているのではないか?と感じる。
3章
カプセル型のそこんとこどうなのよ?Q&A。啓蒙書らしく、ラフなノリでカプセル型がイケてる事を力説している。
4章
スペースシャトルが如何に高コストかを解説。実際に開発が難航して何故高コストになったのかをもう少し具合的に説明した方が良かったのでは。また、アビオの話で、ウンチクネタで鉄板のファミコンの話をするのはお門違いというかNASAの人聞いたらキレると思った。
5章
再利用型が何故ダメなのか、液酸液水ロケットエンジンの限界を交えつつ紹介。単段式が何故ダメなのかを力説。ファルコン9が完全再利用目指している現在から見ると、限界だったのは筆者の想像力だったんやな…としみじみ感じる。またX37など現役バリバリのロケットプレーンの存在も知らなかったのでしょうか。
6章
スペースプレーンに関連してスクラムジェットエンジンの説明。2003年ころはまだスペースプレーンが人気だったんですね。
7章
4章からスペースプレーンとかスペースシャトルを批判し続け、ここで結論。今の人類には再利用型はムズすぎると。この結論も今、といってもたかが10年後だが、から見ると滑稽である。なんだか悪い部分しか見てないからそういう結論に至っちゃったのかな?と感じる。
8章
「ふじ」を宇宙ステーションで使おう、というはなし。さっきまで散々ノウハウがどうのこうの言ってた割には日本がいきなりさも宇宙ステーションを作れるといった記述がなされている。
「今、存在しない『ふじ』をもって国際宇宙ステーションを語るのは空しいことだ。・・・『ふじ』の開発は有益なのである。(129頁)
その肝心の「ふじ」の開発について、マトモに述べられていないのが不思議でしょうがない。
9章以降はJAXA統合を控え、改めて日本の宇宙開発が如何に不甲斐ないかをネチネチとツッコむ。意外だったのが、本書を通じて若田さんや野口さんなどの宇宙飛行士について全く触れられていなかったということ。宇宙飛行士の賛同を取り付けることもかなり重要だと思うんですがね。
最後の締めは、相変わらず一言多い感じでドヤ顔が浮かぶ。そして推薦漫画でMOONLIGHT MILEがない時点で、あまりロマン的情熱はないのかな、となんとなく思いました(真顔)そんな感じの読了感微妙な本でした。まあ今読むから、でしょうけど。そういう意味でもイーロン・マスクは救世主ですね。
この本を読むまで、カプセル型の日本オリジナル宇宙船の話があるとは全く知らなかった。NASDAの先端ミッション研究センターの野田氏が提唱した有人飛行構想と書かれているが、果たしてこれがNASDA公式のものなのか、それとも個人的な研究会のものだったのかは結局分からなかった。あくまで参考程度に読んでみた。
著者の松浦氏は科学ジャーナリストで学者ではない。なので以前読んだH2A何故落ちるのか本では出展が気になってしょうがない箇所が多数あったので、ぜひ学術書も書いて頂きたいものである。
ともかく、口絵にあるなんだか攻殻機動隊2のようなCGは初めて見るものが多く、SF感がかなりある。潰れたアポロのような「ふじ」のCGは結構見応えがあり、このようなCGが多いと想像もしやすく、理解の助けにもなるだろう。
簡単に感想を述べると以下の通りである。
・単なる「ふじ」の紹介ではなく、有人飛行のなんたるや、を数式なども交え詳しく紹介しているのでなかなか勉強になる。入門書としてはスッキリとしてて良い。
・しかし、相対的に「ふじ」の利点を強調しよとするあまり、スペースシャトルなどの再利用型宇宙船へのネガキャンが無駄に目立つ。
・だからこそ、アメリカが無理なら「ふじ」なぞ到底実現不可能だろう、という感想を抱かざるを得なかった。
・日本人の宇宙書物で恒例の「〜であろう」という超希望的観測に基づく記述が多く、さっきまで散々海外の計画disっといてそれは無いだろ、と突っ込まざるを得ない。要は前半の批判で墓穴掘ってる。
とまあそんな感じの内容でした。「ふじ」ってこんなにすげえんだぜ!というよりもスペースシャトルとかをこき下ろすのが中心なネガティブ感マシマシな内容でした。
1章
1頁から15頁まで、「ふじ」の概要について述べられている。しかし、図を多用しているため実質8頁くらいだろうか。さらに半分程度を「ふじ」の観光用途について力説しているもで、技術的な話はそれほどでもない。また開発コストや企業との連携については全く記載がなく、本当に概要といった感じ。そもそもなんで「ふじ」なのかの説明もほとんど無かった気がする(富士山ぽくは無いと思う)もっと詳しく「ふじ」について知りたかった。
2章
スプートニクからアポロまでの有人飛行の歴史について解説。こっちは結構面白いので、宇宙開発史にもっとフォーカスした著作の方が向いているのではないか?と感じる。
3章
カプセル型のそこんとこどうなのよ?Q&A。啓蒙書らしく、ラフなノリでカプセル型がイケてる事を力説している。
4章
スペースシャトルが如何に高コストかを解説。実際に開発が難航して何故高コストになったのかをもう少し具合的に説明した方が良かったのでは。また、アビオの話で、ウンチクネタで鉄板のファミコンの話をするのはお門違いというかNASAの人聞いたらキレると思った。
5章
再利用型が何故ダメなのか、液酸液水ロケットエンジンの限界を交えつつ紹介。単段式が何故ダメなのかを力説。ファルコン9が完全再利用目指している現在から見ると、限界だったのは筆者の想像力だったんやな…としみじみ感じる。またX37など現役バリバリのロケットプレーンの存在も知らなかったのでしょうか。
6章
スペースプレーンに関連してスクラムジェットエンジンの説明。2003年ころはまだスペースプレーンが人気だったんですね。
7章
4章からスペースプレーンとかスペースシャトルを批判し続け、ここで結論。今の人類には再利用型はムズすぎると。この結論も今、といってもたかが10年後だが、から見ると滑稽である。なんだか悪い部分しか見てないからそういう結論に至っちゃったのかな?と感じる。
8章
「ふじ」を宇宙ステーションで使おう、というはなし。さっきまで散々ノウハウがどうのこうの言ってた割には日本がいきなりさも宇宙ステーションを作れるといった記述がなされている。
「今、存在しない『ふじ』をもって国際宇宙ステーションを語るのは空しいことだ。・・・『ふじ』の開発は有益なのである。(129頁)
その肝心の「ふじ」の開発について、マトモに述べられていないのが不思議でしょうがない。
9章以降はJAXA統合を控え、改めて日本の宇宙開発が如何に不甲斐ないかをネチネチとツッコむ。意外だったのが、本書を通じて若田さんや野口さんなどの宇宙飛行士について全く触れられていなかったということ。宇宙飛行士の賛同を取り付けることもかなり重要だと思うんですがね。
最後の締めは、相変わらず一言多い感じでドヤ顔が浮かぶ。そして推薦漫画でMOONLIGHT MILEがない時点で、あまりロマン的情熱はないのかな、となんとなく思いました(真顔)そんな感じの読了感微妙な本でした。まあ今読むから、でしょうけど。そういう意味でもイーロン・マスクは救世主ですね。
【書評】われらの有人宇宙船-日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」- 感想
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