【アマプラ映画レビュー】意外とおとなしい窪塚洋介主演『凶気の桜』428点

渋谷区在住10年の筆者的には好き。基本的に大体の出来事が渋谷区内で完結されているようだ。渋谷好きにはオススメ。




 

原作はヒキタクニオの同名小説。何故かキンドル化されていた。アマゾンによるとあらすじは

怖い大人がいねえから、脳ミソのぱさついた阿呆(パープー)がのさばるんだ。生まれて来て、すみません、って思いを味わわせてやる──。渋谷に若きナショナリストの結社が誕生した。その名はネオ・トージョー。薄っぺらな思想ととめどない衝動に駆られ、“掃除”を繰り返していた彼らは、筋者(ヤクザ)の仕掛けた罠にはまっていた。『時計じかけのオレンジ』の冷笑も凍りつく、ヒップなバイオレンス小説。窪塚洋介主演の映画化原作。

とのことで中々過激な説明が。"アレックスの冷笑も凍りつく、ヒップなバイオレンス小説" とはかなり魅力的なフレーズだ。

そこで本作『凶気の桜』。

イデオロギー磨いている度:★★★★★
点数を付けるなら文句なしの428点




 

既にプライム期間は過ぎてしまったが、また復活する可能性もある。

さて、本作はハッキリ言ってしまうと都会のとある組の内部紛争物語である。
主人公・山口率いるナショナリスト集団『ネオ・トージョー』にはその他に小菅、市川が参画。それぞれを須藤元気とRIKIYAが演じているという、かなりのメガミックスぶりが目立つ布陣である。とにかくこの腐った現代日本渋谷を掃除するため日夜純白の戦闘服を赤い鮮血で染め上げている狂犬・窪塚達だが、案の定筋モノに目を付けられ、手懐けられ、飼い殺しにされる、というのが大まかなストーリー。途中何故か江口洋介が殺し屋役で出てきたりと「渋谷」を感じさせない描写も散見されるが、基本的には渋谷に寄り添った映画ということができる。

確かに、作品的に意味不明なカットやそもそもの撮影が上手くいっていない箇所も見受けられ、ミュージックビデオのような感触を受けることもある。ただし、渋谷というかなり限定されたエリアの物語なので、そのへんの雑さはあまり気にすること無く見ることができるのかな、とも感じる。ともかく渋谷に詳しい人なら見たことがある場所がたくさん出てくるので「あの高橋マリ子があそこに!」という味わい深さを感じることもあるだろう。

それはともかく、山口のセリフは意外とカッコイイものが多い。
自分、イデオロギー磨いてますから」「アメポンですよ」等。

狂犬窪塚などと表現したが、本作ではじつはかなり大人しい。実際はパブリックイメージどおり、というか、特に本作で演じるに当ってキャラクターを作っていない様に感じられるのである。もしかしたら監督から自然に振る舞うよう指示があったのかもしれないが、それだけに狂気を内包する青年然とはしていない。これはまさに唯の窪塚洋介である。

ただし、米人クラブでオカマの売人をボコボコにするシーンは鬼気迫るものがあり、素晴らしい演技をしていたことは付け加えておきたい。



『時計仕掛けのオレンジ』を思い出す

はっきり言って全く方向性の異なる作品だが、本作はスタンリー・キューブリックの名作『時計仕掛けのオレンジ』をところどころで彷彿とさせる。

主人公たちのグループ『ネオ東條』の制服は白の詰め襟風を基調としたもの。一方時計仕掛けのオレンジでアレックス達のチーム『ドルーグ』着ているのもコッドピース付きの白いシャツ。メンバーが持つ武器も鎖だったりとなんとなく似ている。

しかし思想的に『ネオ東條』が渋谷の掃除を目的としているのに対し、『ドルーグ』はウルトラバイオレンスをホラーショーに行うだけで正に対局。もし仮に両者が夜の渋谷で対峙したら間違いなく血を見ることになるだろう。


渋谷をそこまで強調しすぎない作品が心地よい

渋谷を題材とした作品は腐るほどあるが、21世紀以降で渋谷を良く表現していた作品を紹介しよう。




PS3のサウンドノベル『428』。50時間もあれば大体中身を堪能できたと思うが、困った時にインターネットを頼ればストレス無く楽しめる傑作だ。こちらも渋谷に住むものとしては強くお勧めしたい作品筆頭。


2000年代前半の妙なノスタルジーとアンニュイさを持ち合わせた微妙な、ぼんやりとした映画筆頭として今後も語り継いでいきたい作品である。ちなみに、渋谷作品としては珍しく「初台」エリアまで写り込んでいる。








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