学生なら絶対行くべき『防衛省・大学生等サマーツアー』2011年度の随想(その1)
































2011年8月某日早朝、我々は東京郊外へと向かっていました。

集合時間に遅れまいとかなり早くに出たのですが、外は雨模様。夏休み真っ只中だというのに、どこか嫌な感じの日本の空でした。

閑散とした電車に揺られること数十分。下車した先は、稲荷山公園駅。雨がしとしとと降り始めていました。

そして入間航空祭でお馴染みのコンビニに立ち寄り、食料や水を調達。しばらくすると顔なじみS氏がやって来ました。我々は無言でおもむろにゲートへ向かい、制服を着たと2,3言交わし「内側」に止まっていた真新しい大型バスに乗り込みました。

空調が効いた車中には黒いTシャツを着た若い男が2人。何事もなかったかのように待っていると人がちらほら入ってきます。しばらくすると厳かにバスは動き出し、気がつくと同級のI氏も近くにいました。

市役所、というよりも横浜市の区役所といった感じのしなびたクリーム色の建物の中に入り、わりかし小奇麗であるがくたびれた小さい待合室のような所で待たされます。前方にある小さな(と言っても50インチクラス)のモニターには発着の便名や時間が日本語で表記されています。そこに元からいた人たちは皆ブリーフケースを持って新聞などを読んでいたような気がします。背広を着ている人もいれば、制服を着ている人もいます。早朝だからか、皆独りで待っている様子です。窓の外からは時折物凄い轟音が轟いていました。待合室では音楽もなく、飛行機を待つ人々の神妙な雰囲気に支配されていました。


* * *






しばらくすると人が集まりきったのか、「それらしい」人が前に出てきて色々な説明を開始しました。話を聞きながら辺りを改めて見回すと、物凄く昭和な匂いが、いたる箇所から発せられています。それにしても妙な空間です。

彼らは我々を写真付きのID表のようなもので確認していきます。何人かは遅れいている様で、予定の時間より遅くに各種説明が終わったような記憶があります。この際に各種資料と、色別のキャップが手渡され、常に着用しているよう言われます。要は目印です。

そしておもむろに、やたらと大きな金属のケースから小さなドッグタグを取り出し、我々に配布し始めました。そして認識票の説明を受けます。そしてなぜその認識票のケースがそこまでに厳重なものであったのかは、最後まで不明でした。

そしてついに外に出るように指示されます。 小雨はまだ降っていてアスファルトが濡れていて歩きづらいです。ちなみに流石に夏なので寒くは無かったと記憶しております。鈍色の空と濡れたドドメ色のアスファルトの間に、大きなドッとしたモノが鎮座しておりました。



C-1輸送機。川崎重工が製造する中型の戦術輸送機です。所沢の住民なら毎日耳にする轟音の主。この日は我々を西へ運ぶために、2機がお尻の貨物ドアを開けて待機していました。





指示されるがままに、ほいほい乗り込んでいきます。座席は縦に設置された繊維性の吊り下げタイプ。側面、中央2列の系4列です。
C1は通常人員だと定員は60名。重量だと8tです。ここに約30名くらいが乗り込みます。





内部は薄暗く、天井が高く、配線が剥き出しになっています。オレンジ色のランプが微かな温かみを湛えていました。壁面は思わず触りたくなってしまう、柔らかい素材です。
それにしてもとにかく暗いです。



しばらくすると、貨物ドアがゆっくりと閉められ、暗闇に慣れるまで視界が真っ暗になります。

程なくすると機体が動き始め、気づくと我々は空に浮かんでいました。

C-1は600mの滑走路で離着陸が可能です。




期待は飛翔を続け、気づけば雲海の上に出ていました。
制服のおじさんが言います。「主翼が胴体の上にあるから、うるさいけど安定性が高いんだよ」
丸い窓の外にはエンジンと翼。見慣れない光景です。



コックピットも順番に見学させてもらうことが出来ました。
パイロットの方は我々に非常に丁寧に説明をしてくれました。
機内とコックピットでは明るさが全く違うので、少しめまいを起こしそうになります。




真っ暗な機内と明るい空と轟音。これがC-1の印象です。
ちなみにシートはというと、以外にも居住性は悪くは有りません。といっても1時間強のフライトなので、気にならなかっただけかもしれませんが・・・

トイレにも行きました。それは恐ろしく暗く、うるさく、下手したら空に放り出されてしまうのではないかというくらいの代物でしたので、ここではあまり語らない事にしましょう。

* * *



夢のような時間は瞬く間に過ぎ去り、重い音を立てて貨物ドアが開くとそこは南国。
暑い風が頬を撫でます。

とともに、視界に入ってきたのは緑色のジャンプスーツを着た人たちと、遠くまで延々と置かれている戦闘機。見慣れないカラーの戦闘機もあります。

九州は新田原基地に、我々は降り立ちました。



駐機エリアを少し歩いてバスに乗ります。
新田原基地といえば、航空自衛隊の教導団が居を構える場所でもあります。

轟音を立てて、戦闘機が上空を通過します。




那覇空港よりも間近で観れる整備中のF15には大興奮もいいところです。
カメラを握る手が、汗で湿ります。




とある建物へと我々は案内され、屋上に招かれます。
そこからはちょうど目の前にアグレッサーのF-15が整列しており、良い角度で好きなだけ写真を取ることができるまさに夢のような空間でした。





その他にも展示してある期待に乗れたり、PXを見学できたりと、
普段は決して見ることの出来ない、通常営業中の基地の姿は全く新鮮なものでした。






織田裕二主演の映画『BEST GUY』では、織田裕二がこの新田原の第5航空団から北の千歳へと移ってましたが、やっぱり「ごくう」なんだなあと妙に納得しました。


(つづく)








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