そのシアトルの玄関口といえば「シータック」ことシアトル・タコマ空港ですが、そのちょい南に実は世界最大級の私立航空博物館があるのでした。
その名も「Museum of Flight」。航空博物館、飛行博物館と訳せます。
公式サイト
http://www.museumofflight.org/
入場料
大人21ドル(その他ボーイング社員割、軍人割など多数)
場所
博物館は主に6つのエリアに分かれており、その一つ一つが並の博物館レベルの展示です。
とにかく、巨大で成長し続けているのがこの『航空博物館』。
・アヴィエーション・パビリオン
・グレート・ギャラリー
・リア・ギャラリー
・パーソナル・カレッジ・ウィング
・レッド・バロン
・スペース・ギャラリー
この6つです。もちろん他にも屋外展示や売店、カフェなど施設多数。
マニア垂涎の飛行機の楽園
毎年50万人以上が訪れるこの航空博物館。シアトルの中心からは離れているため観光客的には微妙なロケーションですが、ボーイング博物館に行くなら人なら絶対訪れた方が良いスポットであります。
その訳は、とにかく展示内容が豊富&実際に飛行機が飛ぶ滑走路と隣接している
からです。
博物館の周りには空軍の施設、ボーイングの施設や工場、滑走路もあります。
屋外展示の飛行機でも、そこまで悪い保存状態ではありません。
某オレゴンの巨大博物館と比べ、来場者数が多いからか芝生も綺麗です。
シアトルタコマ空港も近いので、空港沿いの広い道をかっ飛ばして行くとこの博物館にたどり着きます。滑走路にアプローチする飛行機のエンジン音がいい感じに響き渡る超最高のロケーションです。
そして最初に目にするのは
展示物の近くにはこんなプレートが。
なんでも不運なことに海軍機の地上目標とされてしまった退役したB-29。ズタボロになっていたところを、ロウリー空軍基地にある博物館ボランティアが保全活動をし、この航空博物館につれてこられたという。
そんなこんなで、我々日本人的には依然DNAレベルでトラウマ的存在であるボーイング社製品B-29がこの博物館にも展示されるのでした!
全米各所にB-29は展示してありますが、屋外展示は珍しいかも。
この博物館のB-29は第875爆撃飛行隊に所属した「Tスクウェア 54」TスクウェアはT型定規の意味ですが、54は正直謎です・・・
ところが!!
B-29「T-スクウェア 54」
B-29は完全なモスボール状態で展示。繭の中のB-29です。
ある意味モスボールの展示としては非常に貴重なのかもしれません。
屋内で見ると巨大なB29も、外でみると意外と小振りな印象を受けます。
ボーイングお膝元の博物館ならではの展示が渋い
シアトルとボーイングは切っても切れない関係です。
いまやアメリカ最大の飛行機会社となったボーイングですが、設立は約100年前のシアトル。
この博物館では、ボーイングが出来たばかりの古き良き時代を完全再現したボーイング専門の展示エリアがあるほどです。
かかっているBGMも1920年代を彷彿とさせるクラシックなもの。
多分ボーイングの偉い人の鞄やマグカップ、有名な機体の一部などが展示。
WW2前後の機体の図面が飾ってあったり、骨董品の各種機械があったりと『紅の豚』や『風立ちぬ』のワンシーンのような雰囲気です。
昔のオフィスは木のぬくもりが感じられたんですね。
グレート・ギャラリー
この博物館は時代ごとに幾つかのエリアに分かれて居ますが、やはり一番大きいのは「現用機」コーナーのグレート・ギャラリー。主にWW2以降活躍した機体が民間・軍用問わず展示してあります。
アメリカらしく超巨大な建物内には幾重にも重なって飛行機が展示してあります。
飛行機が飛んでいるかのようなのびのびとした展示もこの博物館の特徴。
採光も悪くなく、薄暗かったりしないのが良いですねえ。
Tier3の無人偵察機、RQ-3ダークスターも展示してありかなりレアな機体が多いのも特徴です。
世界唯一のM-21とD-21
中央には王者の風格・ブラックバードA-12の派生型M-21が鎮座!
こちらの機体は背中にドローンを背負ったA-12 OXCARTの派生型M-21とD-21のセットです。メタルギアソリッド3でおなじみのこの偵察機のセットが現存するのは世界でも此処だけ。最後の1機です。
実際には空中で背中にドローンのD-21を背負って発射する母艦となります。
保存状態も非常に良さそうです。
M-21はA-12の派生型で乗員は2名。 マッハ3以上で飛行するバケモノ飛行機です。
しかも作られたのは50年前。ベトナム戦争時には沖縄からも出撃したとか。
そのあまりにも特異な形状から、あだ名は『ハブ』
後ろから見ると、また違った印象を受けます。
チタンの塊のこの機体は、ステルス性を高める塗装が施されているのが一般的ですが、各地で若干の際が観られます。
このA-12/M-21は機体の後方はチタン剥き出しな感じ。
機首は黒い部分の面積が狭く、実際の機体サイズより小さく見えます。
2人乗り。
この博物館の場合、高めに設置してあるので機体下部下から見上げることが出来ます。
また、他の博物館のSR-71の様に油もたれてこないので安心です。
主脚部もなかなか太いですが、やはり目立つのはエンジン。
主脚内部はこんな感じで肉抜きされています。
速度帯により、その位置が可変するショックコーン。
物凄く尖っています。
美しく成型された機体表面ですが、流石に経年からか「たわみ」が見られます。
それとも、熱膨張を計算に入れた遊びなのでしょうか。その辺は実動機が見られないのが悔やまれます。
両サイドのタイヤは難燃性のものだとか。
3本並列の重厚感があります。
接近してみると、かなり細かいパーツ分割がされている事がわかります。
これでよく空中分解起こさなかったな、と感心。
M-21"Blackbird" はまさに「マザーシップ」。このコンセプトの機体は今では稀有な存在でした。
プラット・アンド・ホイットニー J58
A-12、M-21、SR-71に搭載され極限まで高速な飛行を可能としたエンジン、がこのターボジェットエンジン・J58です。
32,000ポンドの推力を誇り、機体をM3,2まで加速させるバケモノエンジン。
可変式のエジェクターフラップも巨大。
とんでもない力を生み出し吐き出す
なんとSR-71のコックピットに乗ることが可能
全米各地にドラゴンボールの如く散ったSR-71/A-12ブラックバードシリーズですが、ここの博物館ではなんと事故で大破した本物のSR71のコックピットに座ることが出来ます。
当該の機体は1968年に事故を起こした64-17977の機体。案の定着陸に失敗したものの(ブラックバードの事故は殆どが着陸ミス)、クルーは無傷で脱出しています。
自分の知る限り、本物のブラックバードに座れるのはここの博物館だけ?
・座ってみた感想
案の定、非常に狭いです。身長173cm60kgの筆者で超ジャストフィットという感じ。此処に宇宙服並のスーツを着た大柄の米兵は無理だろと思います。
キャノピーの上部も直ぐそばに迫ってきており、少し背伸びすると頭が出ます。
座席のヘッドレストも実物っぽいです。歴史を感じます。
右を観てみるとこんな感じ。狭すぎて逆に開放感があります。
ソ連機に上空で異常接近されたらこんな感じの絵になるのでしょうか。
コックピットが小さすぎて勝てる気がしません。
ツルッとした表面。
その他
ミグ21PFM
冷戦期のGスーツ。グローブが大きいですねえ。
ナム戦塗装のファントム2。
この辺もカプローニの夢っぽいですね。
時間が無く、レシプロ機は殆どチェックすることが出来ませんでした。
この博物館ももしすべて見るなら、丸一日掛ける必要がありそうです。
何故かUH1も展示。ベトナム戦争使用でしょうか。
様々な機体のコックピットが展示してあります。
アメリカの海軍機
1950~60年代といえば、アメリカ海軍が沢山の機体を使用していた時代。
かなり独特の形状のものが多いですが、やはりF9Fクーガーもそのひとつです。
グラマンのF9Fクーガーはもとのパンサーの主翼を後退翼化させた艦上戦闘機です。
アメリカ海軍極初期のジェット戦闘機ですが、今見てもカッコイイです。
機首に装備された凶悪なフォルムのAN-M3 20mm機関砲が4門。
機体の表面は驚くほどピカピカに磨かれていて、今にも動き出しそうです。
ダグラスのスカイホーク2です。
そしてこの機体はアクロバット飛行チームブルーエンジェルス仕様。
真っ青な機体に黄色のアクセントが入った綺麗な機体です。
まあクーガーは主翼を折りたたんでいる訳ですが、こう見るとそういう飛行機にも見えなくないですね。あと足短いですねー。
そんな感じの『航空博物館』ですが、キッズコーナーも勿論充実しています。
アメリカの飛行機博物館に行くと、大抵フライトシュミレーターがあり、大人も子供もお金を払えば楽しめる様になっています。ここでは子供向けシュミレーターがありました。
ざっと館内を見回してみた感じ。こう見るとファントムが如何に巨大なのかがわかります。
ドローンのD-21もなかなか大きいですね。
本物の飛行機展示も盛り沢山ですが、この博物館は学術的な資料も非常に多いです。
各種試作機の風洞モデルなどの実物も多数展示。
マニア的にはこの辺の方が面白いかもしれません。
ボーイング城下町ながら、他の企業の資料も充実。
アメリカでも2013年頃はまだオスプレイは新しい存在なのでした。
ちなみに、博物館の目の前は滑走路。かなり頻繁に飛行機が離着陸しています。
殆ど全て退役した機体ですが、どれも個性的なものばかり。
RQ-3 ダークスターのノズル。こんな形でよく飛んだなと。
こちらのピカピカのB737は搭乗可能です。
コックピットに入って記念撮影できます。
次回予告
航空博物館の怒涛の展示はとどまる所を知りません。
【博物館】シアトルにある世界最大級の博物館『Museum of Flight』訪問レポ:現代航空機編
Reviewed by 106
on
16:29:00
Rating: